島内節(一般社団法人 日本在宅ケア教育研究センター長)

 本学会の目的は「すべての人に質の高いエンドオブライフケアを実現していくこと」です。その基本理念として「人権としてのエンドオブライフケアの具現化」と「多様な分野のケア実践者・教育者・研究者と市民の参画と協働」を掲げて2016年7月に設立しました。

 わが国は、少子高齢化とグローバル化の加速的進展と複雑・多様化する社会状況において生活上の課題や健康問題も大きく変化し、多死社会を迎えます。このたびの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、年齢・地域・国を問わず、国際社会を震撼させ、しかも短期間に、まさに世界の人々の生命・生活・人生にかかわる健康問題と社会問題を引き起こしています。また国内外で繰り返される自然災害や交通事故なども、家族や親しい人との別れがいつ発生するかわからないという誰にとってもエンドオブライフは身近な重要問題として意識されるようになっています。

 エンドオブライフケアは、誰もが遭遇するエンドオブライフについて事前に考えながら生活し、その時が訪れたら、生きてきた日常性を維持しながら尊厳をもってその人らしく生き抜くことへのケアです。そのプロセスにおいて本人の意思決定やその支援を軸としたACP(アドバンス・ケア・プランニング)が重視され、生命・生活・人生の質(QOL)と価値を高め、家族や重要関係者のグリーフケアまでを含めた医療モデルと生活モデルを統合したケアです。

 本学会の特徴は、年齢・疾病・場を問わず、エンドオブライフについて差し迫った死、いつか訪れる死を考え、エンドオブライフケアのあり方をケア実践・教育・研究について討議・模索・構築していく場です。そのために専門職はもとより市民の参加を重視し、ともに集い・語り合い・学び合うことでエンドオブライフケアの質を高め、コミュニテイの醸成もめざしています。

 上記の内容を効果的に展開していくために毎年、学術集会と委員会活動を行っています。

1)学術集会は、エンドオブライフケアにかかわる人々の相互研鑽のために演題発表・特別講演・教育講演・シンポジウム・セミナーなどを専門職と市民が協力して開催します。

2)委員会は①総務委員会・②編集委員会 ③専門職委員会 ④意思表明プロセス委員会 ⑤市民と専門職の協働委員会 ⑥広報委員会 ⑦倫理委員会であり、それぞれの目的に基づいて数種のセミナーを含めて実践・教育・研究を検討し、普及活動を行っています。

 エンドオブライフケアは先進諸国において高齢化とともに共通課題となっており、医療福祉制度やケア提供方法を変革してきました。本学会は上記の理念・目的のもとに「エンドオブライフケアの実践と教育および研究の効果的な蓄積・深化・普及」を図ります。またエンドオブライフにおける包括的統合的ケアをめざしたパラダイム転換として「制度やケアシステムの政策課題」にも取り組んでいきます。本学会では具体的な活動計画をホームページで公開していますので会員・非会員の皆様に積極的なご参加と協働を期待致します。

 本学会は、以上を通して国内外の人々の健康と福祉および文化の発展に貢献していきます。